国本はる乃 浪曲「若き日の大浦兼武」

2022年7月2日4浅草・木馬亭 浪曲定席にて収録。

演目の「若き日の大浦兼武」は国本武春が師匠東家幸楽から受け継いだネタ!
国本はる乃や玉川太福が継承している。

大浦 兼武は、薩摩(鹿児島県)出身の政治家。明治・大正期に 島根県知事、山口県知事、熊本県知事、宮城県知事、警視総監、貴族院議員、逓信大臣、農商務大臣、内務大臣、大日本武徳会会長を歴任した。

この出世美談をはる乃はノビノビと演じて、二つ目時代の柳家小ゑん(立川談志)を
彷彿させる元気さ発揮、木馬亭の客席を沸かせた。

この演目について国本武春はこう語っている。

演目「大浦兼武」と師匠幸楽 入門の頃の思い出 国本武春

二十歳で入門した私に、私の師匠東家幸楽は数々の「出世美談」を教えてくださいました。
その中の一つが、この「若き日の大浦兼武」であります。
話の中に出てくる主人公と私の当時の年齢がほぼ同じということもあり「あなたにはこれがいいでしょう」と選んでくれた演目です。
この頃よく師匠に教えていただいたのは「とにかくこれからの浪曲はこねくり回したり、もたもたしていたんじゃ駄目。もっとサッササッサとやりなさい。分かりにくい浪曲が一番ダメなんだから」。
どちらかというと入門したての頃から古い感じの浪曲が好きだった私は、テープやレコードで聴いたとても真似のできない様な難しい節をやたらこねたり伸ばしたりしてうなる癖がありました・・・というかそれが良いと思っておりました。
しかし今考えてみれば、まだ入門したての未熟な節をもたもた聞かされたんじゃ聞いているお客様もイライラします。「とにかく節は話の邪魔にならないようにわかりやすくサッサとやりなさい」というのが師匠の一番の教えでした。
私が師匠の奥さんで、名曲師の東家みさ子師匠と稽古をしている間、毎回味噌汁を作り魚を焼いて私に昼食の用意をしてくれた幸楽師匠。無地の布に大きく「希望」という字を刺繍してくれ「今日からこれを使いなさい」と手作りで大きなテーブル掛けを作ってくれた幸楽師匠。売れた師匠、立派な師匠方はたくさんおりましたが幸楽師匠ほど優しい師匠には会ったことがありません。私も頑張ればもうちょっと良い浪曲師にはなれるかもしれませんが、幸楽師匠のような素敵な人にはとてもとてもなれそうにありません。
「大浦兼武」をやらしていただくと、そんな修行時代の優しい師匠の笑顔が今も浮かんで参ります。

国本武春 古典浪曲傑作撰 第五集 (武春堂)ライナーノーツより

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