国本はる乃 浪曲「吉良の仁吉」

2021年10月1日 浅草浪曲定席木馬亭にて収録。 曲師は沢村美舟

〽 義を見ていさむ男の華は 三河が生んだど根性
  咲くも華なら 散るも華 散ってきれいな花もある 散らずに醜い花もある
  咲いて牡丹の花よりも 桜吹雪は粋なもの

〽 吉良の仁吉は 義のために 盃交わした兄弟分の 伊勢の神戸の長吉の
  不運を聞いて決然と 可愛い女房に三行半の 四十五文字の離縁状
  時は慶応二年の四月 桜の花も散りうせて 青葉若葉が目に染みる
  伊勢で名代の荒神山に 散らす血の雨~ 血のしぶき

 吉良の仁吉は実在の人、事実に基づく物語。虎造先生の清水次郎長伝(吉良の仁吉完結編より)で前後の物語を聞くことができる。
 仁吉は三州吉良横須賀(現・愛知県西尾市吉良町)に没落武士の子として生まれた。無口だが腕っ節と相撲が強く、18歳から3年間を清水の次郎長の下で過ごした。次郎長と兄弟の盃まで交わす仲となった後、吉良に帰り吉良一家を興した。
 侠客の穴太(あのう)の徳次郎が、次郎長一家が世話をした伊勢の吉五郎の縄張りであった伊勢荒神山を奪ったため、世に言う「荒神山の喧嘩(血闘)」に乗り込んだ。喧嘩で吉五郎側は勝利を収めたが、仁吉は鉄砲で撃たれた上、斬られて死亡した。享年28。

  収録の2021年10月1日の午後1時、台風16号が房総沖を北上中。木馬亭のある浅草は強い風雨に見舞われたが、客席には熱心な浪曲ファンが訪れていた。

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