国本はる乃 浪曲「英国密航」

2022年8月1日浅草・木馬亭 浪曲定席にて収録。

「英国密航」は国本武春の十八番で広沢瓢右衛門師匠の台本が元になっている。武春はこの作品に加えて「紺屋高尾」「赤垣源蔵徳利の別れ」がベストスリーだと語っていた。
 国本はる乃は3作品とも継承していて、「英国密航は台本が長くて大変」と話している。今回は沢村美舟の三味線で軽快にうなっている。

英国密航に関して武春はこう書き記している。

『英国密航』

 これは広沢瓢右衛門の十八番にしていたネタで、元々は関西の新聞読み(“緒幕末から明治以降の話し”現在は古典になっている)を得意にしていた京山若丸の英国密航。若丸師匠が演ったものを瓢右衛門師匠が大幅にアレンジして自分の作品の様にして演っていた。それを参考にして私が師匠の幸楽の処に有った台本と色々な先輩の資料をミックスして自分也に考えて作ったネタです。大元は瓢右衛門がベースになっています。
 このお話も最後は横浜からロンドまで行くと云う海の上の“道中付け”があり聞かせ所でございます。また私が演じるときに一番重きを置いているのは幕末の若者達の活気。彼らのの好奇心や、探究心、恐いもの知らずというか勇気があったというかインターナショナルであったかという、そういう処をネタを通じて感じて頂ければと思います。

 瓢右衛門師匠は私が浪曲師になったころ頃まだ現役でやっておりました。みさ子師匠の三味線で三越劇場や読売ホールでうなっていたのを私は手伝いで行った記憶があります。みさ子師匠は私が浪曲師になって2年目で亡くなり、まあ1年位の間ですけれど、その後瓢右衛門師匠も身体を悪くして亡くなりました。当時80代後半でかなり高齢で90近かったと思います。三越劇場の楽屋で「私はあんたの四倍はいきていますから・・・」とか「あんた若い人は声がええんでしゃろーなあ」と話をしてらっしゃいました。
 師匠は悪声で「悪声伝」という自分で書いた本も有るくらいで、声が悪いのでえらい大変な苦労したと、でもまあこのそう言うマイナスな処があるからこそ、瓢右衛門という師匠は人が絶対やらないようなネタを作った。色々本を読んでそれに研究を重ねてアレンジしネタを練り上げた。そおいう所が素晴らしい師匠だと思います。
 ネタは沢山あり五月一朗先生の「乃木将軍伝」も瓢右衛門師匠の作ったもの。笑えるし泣けるしというとても構成のしっかりした台本を書く。師匠はその台本を演出してしゃべるタンカの凄さですね、瓢右衛門師匠はなんといっても浪曲が一声、二節、三タンカであればタンカ読みの人。とても自由自在な現代にマッチする様な普通のシャベリ方でお客さんをぐいぐい引っ張って行くタンカの魅力があります。

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瓢右衛門師匠の「英国密航」はYouTubeでもアップされています。
比較をすると台本の進化が見て取れます。

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